23時12分、6畳の部屋でスマホを持ったまま固まった。
画面には「-23,480円」という数字が映っていた。朝8時に入れた証拠金15万円の残高が、10時間後に11万6000円台まで落ちていた。ドル円が夕方のニューヨーク市場に向けて動いたらしい、それだけだ。相場を読もうとしたわけでも、深夜に張りついたわけでもない。ポジションを持ったまま仕事して、帰宅したら消えていた。
— FX(外国為替証拠金取引)とは、異なる通貨の交換レートの変動を利益に変える金融取引を指す。国内の個人向けFX業者ではレバレッジ上限が25倍に設定されており、少額の証拠金で大きなポジションが持てる一方、損失も同じ倍率で拡大する構造になっている。
そのとき俺は31歳、SES(システムエンジニアリングサービス)で年収430万円。残業は月30時間前後。副業の時間は取れる環境だった。老後2000万円問題のニュースを見てから2回、寝付けない夜があった。
老後2000万円の焦りが、俺をFXに向かわせた

金融庁の諮問機関「金融審議会 市場ワーキング・グループ」が2019年に公表した報告書——通称「老後2000万円問題」——は、年金に加えて夫婦世帯で約2000万円の老後資金が必要になるという試算を示した。2026年現在でも、この数字は個人の資産形成を考えるときの出発点として繰り返し引用されている。
つみたてNISAで月1万円積み立てていた。それだけだ。30年続けて元本360万円、仮に年率5%で運用しても1000万円に届くかどうかの水準だ。逆算すると、もう一本柱が要る。副業を探して、ブログ、転売、ライター案件と試した末に「スキマ時間でできて元手が少なくていい」という触れ込みのFXにたどり着いた。
YouTube動画を3本見て口座を開設した。最初の入金は15万円。「まず小さく始める」という意識はあったが、その「小さく」の感覚がすでにズレていた。
1回目の失敗:レバレッジの意味を誤解したまま入金した

FX取引画面のどこかに「レバレッジ:25倍」という表示がある。入門記事を読んだとき「少額で大きく動かせる」という説明しか頭に入らなかった。損失も25倍になるという感覚は、入金するまで腑に落ちていなかった。
ドル円1万通貨を買った場合、1円の値動きで損益は1万円動く。当時のレートが1ドル152円台だったので、15万円の証拠金に対して約152万円相当のポジションを持つ計算になる。相場が0.3円逆行すれば証拠金の約20%が飛ぶ。この計算を「取引前に」理解していなかった。
夕方のドル円が2円近く動いた日、俺はポジションを持ったまま仕事していた。退勤してスマホを開いたら損失は23,480円になっていた。証拠金15万円のうち約16%が1日で消えた。
2回目の失敗:損切りができなかった
含み損を抱えたとき、「決済したら損が確定する。まだ戻るかもしれない」という思考が全面を占めた。損切りラインを最初に設定していなかった。「5000円を超えたら切る」というルールを入金前に決めていれば、23,480円まで膨らむ前に処理できた可能性が高い。
損切りラインは「取引前」に設定する必要がある。ポジションを持ってから考えると、どんな基準も「もう少し待てばいい」という方向に歪む。 含み損を抱えた状態では感情が判断を上書きする。これは意志力の問題ではなく、仕組みの問題だ。
ポジションを5日間塩漬けにした後に相場は戻らず、損失25,800円で決済した。
3回目の失敗:損を取り戻そうとしてスキャルピングに入った
2.5万円を失った翌週、1分足チャートを見ながら短期売買(スキャルピング)を始めた。「1回0.1円抜ければいい、それを1日10回やれば1000通貨で1万円稼げる」という計算だった。
結果は逆だった。1日で証拠金残高が9万円台に落ちた。スキャルピングはスプレッド(取引コスト)が積み重なる。ドル円のスプレッドが0.2銭なら1000通貨で1回あたり20円のコストがかかる。1日15回以上取引を繰り返せば、勝率が50%を切る初心者はコストだけで確実に削られる。俺の損失はほぼその通りに進んだ。
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この記事の要点:FX初心者の失敗の多くは「相場が読めないから」ではない。①レバレッジの損失拡大効果を理解しないまま入金する、②損切りラインを取引前に設定しない、③損を取り戻そうとして高頻度取引のコストを積み重ねる——この3パターンが典型だ。仕組みを知って始めれば、同じ損失の多くは最初から避けられた。
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「FX初心者の損失、どのくらいが普通なのか?」という問いへの答え
結論:「損をした経験がある初心者」は多く、俺も2ヶ月で6万円以上を失った。
金融庁はFX業者に対して定期的に顧客損益状況の調査・公表を義務づけており(2026年時点でも継続実施)、四半期ベースで損失を出している個人投資家の比率は一定の水準で推移している。「FXは仕組みを理解した上で使わないと危険な商品」という規制当局の姿勢は変わっていない。
俺の場合、証拠金15万円のうち6万円以上が消えた時点で取引をやめた。残り9万円を引き出したのは口座開設から2ヶ月後だった。「元本が半分に近づいたら止める」という基準だけは最初から持っていた。その基準がなければ、もっと深みにはまっていた可能性が高い。
「SBI証券と楽天証券、NISAはどっちがいい?」という定番の問いに答える
結論:楽天経済圏に住んでいるなら楽天証券、そうでなければSBI証券。ただし口座開設の特典まで含めて比較するなら、選択肢はもう少し広い。
FXで失敗した後、俺は「まず株式投資の口座を開く方が先だった」と思い直してNISA口座の比較を始めた。2026年時点でよく検索されるのがSBI証券 vs 楽天証券の比較だ。実態を整理する。
SBI証券のNISAは投資信託のラインアップが業界最多水準で、三井住友カード系のクレカ積立によるポイント還元率が最大1%。成長投資枠での個別株・ETF取引の手数料体系(ZEROコース)が整備されており、積極的に運用したいユーザーに向いている。SBI証券 vs 楽天証券 NISA 手数料 2026年版の比較では、成長投資枠を積極活用するならSBI証券が有利なケースが多い。
楽天証券のNISAは楽天カードとの積立連携で100円から1ポイント還元。楽天銀行との連携口座(マネーブリッジ)で普通預金金利が年0.1%になる点は他の証券口座にはない特徴だ。楽天市場・楽天カードを日常的に使っているユーザーは、楽天証券との連携で恩恵が積み重なる。
新NISA 楽天証券 SBI証券 比較 2026という観点で率直に言えば、積立投資(インデックスファンド中心)の商品ラインアップと手数料は両社でほぼ横並びに近い。差が出るのは「証券口座以外のサービスをどこで使っているか」によって決まる部分が大きい。楽天ユーザーなら楽天証券、それ以外ならSBI証券という整理が今も実態に近い。
ただし俺が実際に開設したのはDMM株だった。
「なぜDMM株にしたのか?」——特典と、UIの軽さが決め手
結論:新規口座開設+1回取引で最大10,000円相当の特典があり、口座開設フォームが5分で完結した。
SBI証券と楽天証券の比較記事を読んでいるとき、口座開設特典の情報でDMM株が目に入った。米国株・日本株の両方に対応し、NISAも使える。UIがシンプルで、FXで見慣れた複雑なチャート画面と違って視認性が高い(2026年4月時点の公式情報による)。
FXで複雑なレバレッジ画面を触り続けた後、余計な情報が少ない画面が合っていた。口座開設フォームを5分で入力して、翌日には審査が通っていた。「まず1回取引する」という特典条件も、積立投資を始めるきっかけとして丁度よかった。
FXに再び向き合うなら、CFDという入り口もある
FXで失敗した後も「レバレッジを使った取引を学びたい」という気持ちは消えなかった。FXよりも仕組みを理解してから入り直したかった。
CFD(差金決済取引)は、FXと同様に差額決済の仕組みを使いながら、原資産が外国為替だけでなく株価指数・金・原油・個別株など多岐にわたる商品だ。「ドル円一点集中のリスク」を分散できる点で、FXの入門段階よりも構造を理解しながら進めやすい面がある。
DMM CFDは全銘柄の取引手数料が0円で、入金時の特典も付いている(2026年4月時点の公式情報による)。俺は資金の一部をCFDに移して少額から再スタートした。損切りラインを取引前に設定すること、レバレッジを低めに抑えることは、CFDでもFXと同じ前提条件だ。仕組みを理解してから入ると、同じ失敗の多くは避けられる。
23,480円の損失は無駄だったか
6万円以上を失った2ヶ月を、完全には後悔していない。「仕組みを知らないまま動くとこうなる」を、老後資金の本体を動かす前に経験できたと今は思っている。
年収430万円、残業月30時間、つみたてNISAを月1万円積み立てながら老後2000万円の問いを抱えている状態は変わっていない。FXで失敗した後の俺の動きはシンプルだ。つみたてNISAの積立額を月1万円から月3万円に引き上げ、DMM株で米国ETFを少額積み立て、余力があればDMM CFDで限定的なリスクを取る。FXへの再参入は今のところない。
仕組みを知って入れば避けられた失敗のパターンは、この記事に書いた通りだ。まず公式ページで口座開設の手順と特典を確認する——5分で完結する。それだけでいい。


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