3月の終わり、人事部の田中さんに「来期の契約のことなんですが、少しよろしいですか」と声をかけられた。ミーティングルームのドアが閉まった瞬間、頭の中で数字が走った。貯金24万円。手取り22万から、毎月なんとか積み上げてきた全財産だ。
俺は38歳、東京、派遣3年目。5年着回しているリクルートのスーツと、近所の靴屋で7800円で買った革靴。同期がSNSで転職や昇進を報告する投稿を見るたびに「そのうち動かなきゃ」と思ってきた。そのうちが今日になった。
— 転職サイトとは、求職者と採用企業をインターネット上でつなぐマッチングサービスを指す。大別すると「求人型(自分で検索・応募)」と「エージェント型(担当者が間に入り求人提案・選考代行を行う)」の2種類がある。
アプリ3つ消した夜

その夜、帰りの電車の中でスマホを開いた。「転職」と検索すると、リクナビNEXT、doda、マイナビ転職が並んでいた。3つ全部ダウンロードした。「あなたにおすすめの求人は1,247件」という画面が出た。
12日後、3つとも消えた。
理由は単純だ。どのアプリを開いても、求人が多すぎて選べなかった。スカウトメールが1日に3通届いたが、タイトルが「ぜひご参加ください」とほぼ同じ文面で、本物のスカウトと一斉送信の区別がつかなかった。プロフィール入力画面に「職務経歴書」という欄が現れて、書き方がわからなかったのでそっと閉じた。
これが俺の、初めての転職サイト体験だった。
なぜ「初めて」は失敗するのか

厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」によると、転職経験者の平均活動期間は3〜4ヶ月とされている。それだけの時間、無収入または収入不安を抱えながら動き続けるには、最初の一手を間違えると折れる。
俺が失敗した理由を後から整理するとシンプルだ。
求人型サイト(リクナビNEXT・マイナビ転職)は自分で動かないと何も起きない。 プロフィールが薄いと「おすすめ求人」の精度が低くなり、1,000件超の求人の前で固まる。スカウトメールの8割は一斉送信で、選考に進んでも日程調整から書類準備まで全部自分でやる構造だ。
エージェント型(doda・リクルートエージェントなど)は担当者が動いてくれるが、登録後に電話面談があり、準備ゼロで受けると「現状維持希望」と判断されてフォローが薄くなる。
初めての転職で失敗するのは、この2種類を同じものとして扱うからだ。ランキング記事を読んで全部登録するのは、最初のステップとして最悪の入り方だ。
転職活動中に固定費を先に切っておく理由
内定が出るまでの3〜4ヶ月、毎月の生活費が精神的にのしかかる。手取り22万、家賃と食費と交通費で残り数万。この状態で活動を続けるには、固定費の削減を先にやっておくほうがいい。
俺は光回線の見直しをした。NTTフレッツのままで月5,500円払っていた。乗り換えを調べたところ、ソフトバンク光はキャッシュバック最大40,000円・工事費実質無料という条件が出ていた(2026年4月時点の公式情報による)。40,000円は転職活動の交通費2〜3ヶ月分になる。代理店経由で手続きが完結するので、自分で複数社に問い合わせる手間もかからない。
転職活動の準備と同時並行で固定費を削っておくと、内定が出るまでの心理的プレッシャーが確実に下がる。
2度目の転職活動でやったこと
失敗から3週間後、やり直した。今度は一つだけ変えた。
エージェント型に1社だけ登録し、面談を受ける前に職務経歴書の下書きをA4一枚、30分かけて作った。
内容はシンプルだった。3年間やってきたITインフラ保守の業務内容、使ってきたツール名、トラブル対応の経験をそのまま書いた。うまい文章は必要なかった。エージェントの担当者が面談で直してくれた。
「現状と希望」を正直に話した。派遣3年目、38歳、正社員転換したい、年収が今より下がっても安定がほしい。すると「プライム市場上場のSES企業で、派遣から正社員採用をしている求人がいくつかあります」と返ってきた。
1,247件の前で固まった俺が、30分の面談で具体的な3社に絞られた。
この記事の核心
初めて転職サイトを使う人が知っておくべきことは一つ。求人型とエージェント型を分けて、最初はエージェント1社に集中する。 複数サービスの並行利用は、内定が出た後の条件交渉フェーズでやること。職務経歴書はA4一枚から始めれば足りる。書き方はエージェントが直してくれる。転職サイトのランキングを全部読んで全部登録するのは、初めての転職では確実に失敗パターンだ。
サイトとエージェントって何が違う?
Q: 転職サイトと転職エージェント、何が違うのか正直わからない。
A: 転職サイト(求人型)は自分で求人を探して応募するプラットフォーム。転職エージェントは担当者が求人提案・書類添削・日程調整・条件交渉を代行するサービスだ。 どちらも無料で使える。初めての転職なら、エージェント型から入るほうが失敗が少ない。求人型は転職経験がある人や「自分で探せる・絞れる」人向けと考えていい。
38歳、派遣から正社員は本当に動けるのか
Q: 38歳の派遣社員でも正社員への転職は現実的?
A: できる。ただし「同業の正社員転換」と「未経験業界への転換」では難易度が全く異なる。 俺の場合、3年間積み上げたITインフラ保守の経験を同業のSES企業に持ち込んだ。インフラ系・保守運用系の経験者は2026年現在も人手が不足しており、38歳でも複数の内定が出るケースは珍しくない。逆に「38歳未経験でWebエンジニアになりたい」は相当な準備が必要になる。職種の方向性を固めてからエージェントに相談するのが先決だ。
内定の翌週——NISAと証券口座を開いた話
転職が決まり、手取りが22万から26万になった。月4万の差は思ったより大きかった。
貯金24万円のまま転職活動をしていた3ヶ月間、「老後のことを何も考えていない」という現実がじわじわ来ていた。内定の翌週、証券口座を開くことにした。
新NISAを始めるにあたって2026年現在でよく比較されるのが、SBI証券・楽天証券・DMM株の3択だ。
SBI証券と楽天証券のNISA比較で迷っている人は多い。2026年の比較軸として「ファンドの選択肢の広さ」ならSBI証券、「ポイント還元と操作のシンプルさ」なら楽天証券という分け方が一般的だ。ただ俺が先に動いたのはDMM株だった。口座開設の手続きが最短5分で完結したこと、そして口座開設後に1回取引を完了するだけで受け取れる10,000円相当の報酬が、積立NISAの初月の元本スタートダッシュになったからだ。
SBI証券と楽天証券のNISA比較で悩んでいるなら、先にDMM株で口座を作って報酬を受け取り、それを元手に積立を始めるという順番は現実的だと思う。
余裕資金の次の一手
Q: NISAの積立を始めた後、次に何をすればいい?
A: 積立NISAで長期の資産形成の軸を作った後、余裕資金の一部でCFD(差金決済取引)に触れる順番が過度なリスクを取らずに済む。 DMM CFDは全銘柄の取引手数料が0円で、入金に連動した報酬キャンペーン(2026年4月時点の公式情報による)がある。株価指数・金・原油などに少額から触れられる。元本割れリスクがある商品なので、まず積立NISAの月次積立を固定してから検討するのが正しい順序だ。
3月末から3ヶ月後
人事の田中さんに「来期の契約が難しい」と言われた日から3ヶ月後、俺は別の会社の社員証を首にかけていた。
転職サイトを3つ消した失敗の後、エージェントに1社だけ登録して、職務経歴書をA4一枚書いて、面談を2回受けた。それだけだった。ランキング記事は読まなかった。スカウトメール1,247件の前で固まることも、もうなかった。
初めての転職で必要なのは、サービスをたくさん登録することではない。エージェントとの面談1回だ。その面談を受ける前に、職務経歴書の下書きを30分で作る。それだけが、貯金24万円で3月末を越えた俺がたどり着いた結論だ。
まずエージェントに1社登録し、A4一枚の下書きを今日中に作る。その一手が、今の状況を動かす最初のアクションだ。


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